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混雑した駅で学ランを着た少年はため息を一つ吐いた。
見た目もスタイルも至って普通の少年。隣りに立つのは同じく少年と学ラン姿の長身の少年だった。彼は肩からスポーツバッグを掲げていかにもスポーツ少年だ。
「沢田(さわだ)は本当に来ないんか?」
「バスケ部の集まりに何で俺が行かなきゃいけないんだよ…」
少年は呆れたように彼を見た。スポーツ少年は爽やかに笑うと少年の肩に手を置いた。
「だからバスケ部入れって」
「やだよ。上田(うえだ)は何で俺を誘うんだよ…」
「足速いじゃん。よく走ってるだろ?」
そう、少年はよく走っていた。だが走る理由は彼のような爽やかな理由ではなかった。
少年は困ったように笑って彼を促した。
「ほら、お前電車乗らなくていいのかよ?いつまでも改札前にいたら遅れるぞ」
「あ、やべー。じゃあ、明日な」
スポーツ少年は笑って改札をくぐり抜けた。平日の夕方は駅が混雑していた。
学校の帰り道、電車通学ではないのが少年にはありがたかった。
駅、病院。限られた場所だけではないが少年は一人でその場にはいたくなかった。
今日だって友人が電車でバスケ部の集まりに行くという理由が無ければ近づいていなかった。
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