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リューチェ――
楽しみだったパーティも、二時間もすると飽きてきた。
色で目が疲れるし、同年代の子が殆どいないから、尚更だ。
兄様のパーティには、兄様の友達も、その兄弟も来ない。
来るのは、兄様と同年代だけど笑って敬語で話す人達と、大人くらいのものだ。
父様と母様にくっついての挨拶まわりも終わって、(ネクタイは、結局つけられた。挨拶が終わってすぐ、取ったけど)やっと自由になれたのに、飽きてしまった自分が勿体ない。
一日ずっと笑っていなきゃいけない兄様は、もっと勿体ない。
僕も、大人になったら兄様みたいになるのだろうか。
兄様は格好良いけど、僕はあんな風に、悲しい笑顔はしたくない。
いつも、心から笑っていたい。
あの笑顔の時の兄様は、自分が悲しくならないのだろうか。
人ごみを避けているうちに、裏庭の方に来ていた。
庭より小さくて、暗いイメージ。
鬱蒼とした木々。
昼間でも暗くて、人もあんまり近寄らない。
でも、僕はちょっと好きだった。
誰も知らないだろうこと、見つけたから。
自慢ではないが、僕は生まれてこの方、まだお城の外に出たことが無い。
王子や王女は、中等学校からでないと、みんなと同じ学校に行けないからだ。
詳しく言うと、「貴族向け」の学校に。
それまでは、家庭教師に勉強を教えてもらう。
それ以外の人達にも、階級ごとに色々と決まりやなんかがあるらしい。
学校なんて、どこでも好きなところへ行けば良いのに、というのが僕の正直な感想なんだけど。
話が逸れてしまったけれど、そんな世間知らずな僕が見つけたのは、ここを囲う塀の一角に出来た、穴だった。
大きさは、兄様が入れるか入れないかくらいで、茂みの葉で隠れていたからか、大人には、見つからなかったようだ。
まだ外へ出たことは無かったけど、そこから外を見ると、とても楽しい。
「坊や」
突然、かけられた声に、僕は驚かなかった。
むしろ、前からずっと分かっていたような気すらした。
この時が来ると、昔から……。
振り返ると、近くの蔓や茎が絡まった錆びたベンチに、隣に大きな箱を携えたお婆さんが座っていた。
あれ、とよく見てから思う。
どうしてお婆さんだと思ったのか、自分でも分からなかった。
肌の白さは、生きている人間だと思えないくらいで、それとは対照的に、フードの中の髪は、ちぢれた黒髪だった。
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