口上

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寄ってらっしゃい、見てらっしゃい。 さぁさ皆さんお立ち合い。 ピエロの人形劇が始まるよ。 これから私ピエロめが、不思議な世界へご招待。 メイクも服も違うのに、何故私めがピエロと言うか? 無粋なことを仰る方だ。 人で無き奇術とおどけを司るは、ピエロと相場が決まっておりましょう。 ジャグリングは人形劇、三角帽子はキャスケットと致しまして、私は、他のピエロが出来ぬ芸当をお見せしましょう。 さて、何をするか、分かりますかな? 簡単ですよ。 目立たないのです。 ――苦笑、有り難く頂戴致します。 これしきのことで笑ってくださるあなたなら、懐も十分潤っていると存じ上げる。 笑う御慈悲がおありなら、この哀れなピエロにも、僅かばかりのお恵みを。 いやいや、せびる訳ではありません。 私が、そんな心の狭いことをするように見えますか? ……見える、と。 第一、格好からして? 清潔な白いシャツに、上等な革のブーツ。 長めな黒い半ズボンと知的な茶色のキャスケットまでご覧になっておいて、そこまで仰いますか。 ――アルバイト? 心外だな。 これは私の職業です。 彼らと共に、世界中を放浪しています。 ――若過ぎる? どう見ても、十四~五歳ではないかと? ……あなた、見る目があります。 それは、近くもあり、遠くもありますから……。 おぉ、何時の間にやら、多くの方に立ち止まって頂けたようですね。 では、ピエロのつまらぬ話は終いに致して、楽しい楽しい人形劇を始めましょう。
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