3人が本棚に入れています
本棚に追加
彼も、王族という盾で護られていなかったら、その辺に捨てられ、鼠にでもかじられていただろうよ。
……まあ、その姿も少し見てみたくはあるがね。
神は、リューチェと名付けられた。
光という意味だ。
魂胆見え見えの馬鹿らしいネーミング。
頭の薄さが、手に取るように分かるね。
彼等にとってみれば、リューチェは神以外の何物でもなかったんだけど、彼はあくまで人間だ。
過信ほど、人を堕とすものは無い。
自分達の無闇やたらな、神に教えを乞うが如くの過剰な期待と信頼とかいうエゴイズムが、彼を人間ですら無くならせるなんて考え、彼等には一片も無かったんだよ。
言うなれば、「悪気は無かった」ってところかな。
彼の最も不幸なところは、堕ちていく様を、誰にも見せなかったことだね。
おかげで、彼がもう人間で無いと、気付く者はほとんど存在しなかったんだから。
……と、突然こんなに未来へ飛躍してしまってはいけないね。
せっかく生まれたリューチェ王子だけど、生まれてから四~五年程、その姿が国民の前に出されることは無かった。
ある程度成長した時、貴族の目に初めて触れた。
貴族達から貴族の使用人に伝わり、使用人達から一般のプランツェ達に、その姿が知れたんだ。
初御披露目から一年も経たないうちに、リューチェは、今度は皆に知れた存在になった。
民は、口々にその可愛らしさと賢さを噂する。
さて、前置きはこれくらいにしておこうか。
そろそろ、彼も自我を持ち始めた時期だ。
彼と、彼の周りの人生を、それぞれに沿って見てみようじゃないか。
主要人物は、全部で四人。
黒髪の悪魔に、期待外れの兄。
婚約者……それから、銀の髪の人形だ。
彼等は、どんな人生を歩むのだろうねぇ。
先が、非常に楽しみだ。
愚かな人間達は、最後に何を見るのだろうね?
.
最初のコメントを投稿しよう!