一幕――光の王子

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*      *      *  「ハッピーバースデー、兄様。十四歳、おめでとうございます」 無邪気で、無垢で、まっさらな笑顔。 ネクタイをつけずとも、本気で咎められないのは、この笑顔と、髪と瞳があるからだ。 「あぁ……」 オレは、こいつの前では、他に誰がいても笑えない。 こいつを恨むのは、筋違いだ。 それでも、恨まずにはいられない。 オレと違う二重の目が、光の具合によって蒼みがかって見える左の瞳が、えくぼの無い頬が、オレの苛立ちを掻き立てるのだ。 純血のくせに、雑種に負けたのかと、周りが目で言っているのが、分かるのだ。 現に、オレには欲に目を輝かせて寄って来る連中が、リューチェには道を開ける。 神と人間の差。 成功作と、失敗作の差。 嫌みな程自然に、それを見せつけてくる。 屈託の無い笑顔と、王の証をもって。 周りと軽いやりとりをして、去っていく。 小さな体は、すぐに人ごみに紛れ、見えなくなる。 目立とうにも、まだ体格が小さくて、レースやらフリルやらばかりの服に重なってしまって見えない。 「リューチェ様って、まるで天使のようよね」 「快活で、可愛らしくて。これで、国も安泰だわ」 笑いが、さざ波のように広がっていく。 リューチェが出て来たことにより、場が和んだ。 リューチェだからなのか、それとも、子供というものは、全てこんな働きをするのか。 「オルト様も、そう思いませんこと?」 私、本当のことを言っているだけですのよ? そんな笑顔だ。 「そうですね。リューチェが国を治め、私が戦を制すれば、この国も更に繁栄するでしょう」 「頼もしいですわ。流石、次期国王の兄上様」 爽やかな笑顔で、こちらも答える。 皮肉と皮肉の応酬。 こんな生活を望む一般人達は、一体どんな頭をしているのだろう。 理解に苦しむ。
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