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卒業式は感動の渦を巻き起こして終わった。
もう皆とも別々になり、それぞれの道を歩んで行く。
僕は探偵への一歩を踏み出したことへの喜びよりも、別れを惜しむ気持ちの方が上回ってしまっている。
「空……朱羽……」
無意識にそう呟いてしまった。
あの日以来僕はこの日を恐れていた。
彼女達と別れてからというものの、今あるものを失うことへの恐怖心が未だに潰えない。
最も大きな理由は――。
父の死……。
「風水? どうしたんだよ? ぼーっとして……」
急に声をかけられて、我に返る。
今までのはただの過去。
過去なんてもう過ぎ去ったものなんだよね……。
いつまでも引きずっている訳にはいかない。
「ううん。何でもないよ」
僕には前に進まなければいけない義務があるんだ。
組織の謎を暴くためにも――。
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