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ダムダムダム……。 真夏の体育館。 残り20秒。 ゼッケン8を付けた選手がゴールを目指してドリブルをする。 しかし、それを阻止しようと沢山のディフェンスが立ちはだかる。 そのディフェンスも軽やかにかわしていく。 「よしっ。」 小さく呟き、ゴール近くでシュートの構えをする。 ぱっ、と手からボールが離れた瞬間。 黒い大きな影が目の前を覆う。 気が付けば、手から離れて綺麗な弧を描いていたボールはもう無かった。 ピピーー! 試合終了であるホイッスルの音が体育館中に鳴り響いた。 「っち…、くそ……。」 ゼッケン8を付けている選手の名前は"村川 実殊" H高校生2年生。 そして男子バスケ部の背番号8、エース的存在。 ……だった。 そう、アイツが来るまでは。 さっきの試合の結果は10対12。 残り数秒でシュートを決めた筈がカットされ、逆転ゴールを相手に……。 いや、アイツに決められた。
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