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「で、授業を投げ捨てたと」 「そうなの。あの授業グループワークメインだから、一回休んだらなんかぼっちになっちゃう! とか悩んでたんだけど、味方がいて救われたよー」  今日はバリバリの平日。当然の如く、一回生たる好希たちには講義がみっちり詰まっている日だ。 「ま、いいじゃん一回くらい。ボクなんか、かれこれ三日ぐらいダウンしてたよ」 「そっか。今も具合悪いの? なんかごめんね」  心配そうに目をうるっとさせる遼の言動は、まあいかにもな女子大生だ。この娘がどちらかといえばボーイッシュ、変人で通してきた自分と同じ生き物とは、世の中は不思議である。 「もうほぼ治ったけどねー。それより、マスクしたほうがいいと思うけど。そこらじゅうにウイルス飛んでるよ」 「あ、そっか。そうだよね……わたし、あんまり病院に縁がなくて。……そうだ、好希ちゃんはいつから学校来れる?」  他にいっしょの講義あったら、資料もらっとくよ? とピンクの時間割表を開く。散りばめられた付箋や蛍光ペンはいかにも新入生らしく、たどたどしい思考錯誤の跡があちこちに見える。 「んー、もう明日ぐらいには復帰する予定。講義もあるし、いつまでもダラダラしてたらついていけなくなりそうだから」 「ほんと? じゃあ、明日わたしと一緒に学食行かない? なんか一人だと、他のグループとかがいるとこに座りにいく勇気なくてさ」 「はは、ボクといっしょだ。最初からグループできてるとこって、なんか入りづらいんだよね」   肩を竦めて微苦笑。知り合いが誰もいない環境にもいい加減慣れてきたが、やはり話し相手がいないのは寂しくもある。 「へえ、好希ちゃんもそうなんだ。講義のときは、みんなを引っ張るリーダーっていうか、なんか、お姉さんみたいな感じだと思ったよ」 「そんなに年上に見えた?」 「や、真面目で頼れるなあ、って。わたしが結構ぼけっとしてるほうだから、余計に大人っぽく見えたんだと思う」  純真というか、こちらの心が汚れていることを再認識させるような笑顔。大学生にもこんなお嬢様みたいな娘がいるんだなあと感心する。
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