桜の記憶

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手の中に、大事そうに桜の枝を抱えたリルは、男のもとにつくまで懸命に息を吹きかけ続ける。 熱いものを食べようとしているようにも見えるのだが、間違いなくそれは『力』を与える行為なのだろうなとわかったので、男は笑いそうになるのをこらえた。 息をかけるのに夢中になりすぎて、途中何度か転びそうになりながらも、男のもとに辿り着いてリルは満面の笑みを浮かべる。 『あい!これでだぁいじょおぶ!』 「秋の国まで、咲いてる、ってことかな?」 『うん!』
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