3444人が本棚に入れています
本棚に追加
ケタケタと笑いながら、少年は道を指差して見せる。
男性――死体を無理矢理どかして作り出した歩道。血で真っ赤に染まった、バージンロードのようなその道を。
「…………」
「どうした、さっさと通れよ。それとも血で靴は汚したくないってか? 結構潔癖なんだな、おにーちゃん。悪いがオレは今ハンカチの持ち合わせはないんだ」
そういうわけではない。
勿論、俺としても、こんな異常な場面からはさっさとオサラバしたいところだ。
DDにパシられた約束の代金を届けて、家に帰って風呂に入って、冷凍しておいたカレーを食べて、愛用の布団にくるまれて寝る。明日のバイトは休みだから、ゆっくり惰眠を貪るのも良いかもしれない。
――なんて。
そんな夢のような妄想を一通り巡らせたところで、
「――笑わせんなよ」
少年の真っ直ぐに見据えながら、そう言ってやった。
「その目――俺のよく知る悪魔と同じだ」
濁り切った目。
人を嘲笑い。
人を騙し。
人を弄ぶ。
それらを当たり前のモノとして捉える――嘘吐きの目。
抉り取るのも悍ましい気持ち悪ぃ、外道の目だ。
「このまま俺を帰らせるつもりなんて無いんだろ? 殺人犯が、目撃者を黙って逃すはずがない。油断したとこをも見計らって殺してやろうって魂胆が見え見えだ」
最初のコメントを投稿しよう!