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「ヒトはそれぞれ、進める道ってのが予め決まってんだよ。俺の場合は、その進める道ってのが【壊し屋】みてェな汚れ仕事しかなかっただけだ」
「……だから、【壊し屋】になるのは必然だったとでも?」
「あァ、その通りさ」
「俺には、被害者ぶって自分の可能性をテメェで潰したようにしか思えないがな」
「ひひっ、身震いするほどの御高説だな。偉くお高い所に留まって見下ろしてくれてんじゃねェの、おにーちゃん。なァ、オイ」
グッ、と俺の喉を掴む小太郎君の手に、力が入れられた。
こんな華奢な腕の何処にそんな力があるのか。息が詰まるほどの圧迫感が喉を襲ってくる。
「覚えときな、おにーちゃん。ヒトが道なき道を進んでる時、それは進んでると言うんじゃねェ。迷ってるって言うんだぜ?」
「…………」
「進んでるつもりが、実は迷ってた。その結果が、今のおにーちゃんなんじゃねェの?」
「っ」
その瞬間。
自分でも驚く程乱暴に、俺は小太郎君の腕を叩き飛ばしていた。
喉に加えられていた圧迫感に反して、彼女の腕はあっさりと弾かれる。
強く締め付けられているように感じていたのは、もしかして俺の錯覚にすぎなかったのだろうか。
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