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勿論、こんな素っ気ない呼び出し、素直に応じてやる義理なんざ欠片もないが、だからと言って内容が内容なだけに、無視を貫くのも寝覚めが悪い。
葛藤の結果、幸せそうに涎を垂らしながら熟睡している小太郎君に、軽いメモ書きだけを残して出発。
大人しくラブレターに指定された体育館裏―――もとい、【南区】まで足を運んでやったというわけだ。
「……っと」
そうこうしている間に、目的の場に到着した。
目の前に聳えるのは、巨大な塔のような建築物。
流石にDDの城程ではないが、それでも見上げ続けると、首が悲鳴を上げ始めるに違いない高さだ。
――ホテル・ヴィーゴ。
【南区】でも一際目立つ、今時珍しい高層型高級ホテル。
外装も内装も豪華絢爛。
サービスも非常に良好。
文句なしの一流宿泊施設。
しかし立地区域が【南区】のため、一般の利用客は極僅か。
それでもこのホテルが経営難に陥らないのは――"そういう方々"御用達御贔屓のホテルだからだろう。
困ったもんだ。
いや、困らないんだけどさ。
朝も早くから待機しているドアマンにエスコートしてもらい、中へ。
煌びやかな内装に一瞬目が眩んだと思ったら、次の瞬間には、頂上が遥か高い吹き抜けのホールが目の前に広がっていた。
気分はまるで、異世界にでも足を踏み入れたかのよう。
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