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「――いらっしゃいませ」
そうこうしていると、フロントから一人のホテルマンが素敵なスマイルを浮かべながら近づいてきた。
「お話は伺っております」
「残念ながら俺は伺ってないないけど」
「お客様がお待ちです。最上階まで、どうぞ」
有無は言わさないってわけか。
半ば強引に部屋のカードキーを渡され、エレベーターへと案内される。
はて。
今のフロントの彼は、一体いくら袖の下を貰ったのだろうか。それとも、ただ単に脅されただけなのか。
ゆっくり上昇していくエレベーターの中で、そんなことを考えること数十秒。
どの階にも途中停車することなく、エレベーターは無事に最上階へと到達した。
ドアが開いたすぐ目の前には、ゴテゴテと装飾が施された仰々しい扉。
「……まぁ、最上階だもんな。スウィートルームに決まってるか」
光栄だね、まったく。
相手方のある意味厭味ったらしい部分に悪態をつきつつ、カードキーを通すと、電子音と共に施錠が解除された。
ホテル・ヴィーゴ。
その最上階に位置するスウィートルームへと足を踏み入れる。
―――と。
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