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――鷹峰会。
予想はついていたが、やはりそうか。
「……沢木京介だ」
名乗りながらも、小太郎君と初めて出会った時のことを思い出す。
鷹峰会――間違いない。
彼女が言っていた暴力団のことだ。
彼女に依頼し、彼女を裏切り、彼女からその報復を受けた組織。
「沢木さん。まずは、貴方をこちらまでお呼びするような形になってしまったことを、お詫び致します」
背広の男――改め江本は、深々と頭を下げたきた。
「何分、沢木さんのお住まいは中区――【中心街】でしたので」
「…………」
「あの区はこの鞍柘市において、唯一何色にも染まらない空白の区域。どの区からも決して干渉されず、他区域の人間は【中区】に事件を起こしたり、必要以上の干渉をすることは許されない」
鞍柘市における永世中立の区。
他の区とは明らかに違う異色の場。
"特色がない"。
"何でもない"。
"何もかもない"。
――それ故に、外部の何処からも干渉されない。関わられることがない。
敵もいなければ味方もいない。
中立とはすなわち、孤独。
それはまるで、存在していないかのように。
「"この鞍柘市には共通のルールはない。しかし、守らなければならない約束事はある"――そうでしょう?」
「……あぁ、そうだな。ご主人様が、ちょっと前にそんなこと言ってた気がするよ」
「中区への不干渉の原則は、まさしくそれに含まれています。ですので、南区に属する私達が、中区に在住する沢木さんをお話しするには、こうして呼び出すという形でしか―――、」
「なぁ」
躊躇なく、遮る。
江本の言葉を。紙みたいに薄っぺらい言葉を。
「――こちとら貴重な惰眠の時間を削って、眠い目擦りながら出向いてやってんだ。余計な前置きはいーから、さっさと本題に入ってくれねーかな」
「…………」
「それとも、俺に途中で居眠りしろとでも言うのか?」
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