【第二話】

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瞬間。 江本の笑顔が――凍てついた。 「……何故でしょうか?」 「何故だって? んなもん、決まってるだろうが。誰が馬鹿の味方なんてするかよ」 吐き捨てるように言い放つ。 引き裂いた名刺を、ゴミのように放り棄てる。 「三流暴力団が、乏しい頭を振り絞ってどれだけ優良な策を練りだそうと、小太郎君をどうこうできるわけがない。勝機のない策に巻き込まれて死ぬのは御免被る。俺は、そこまで愚かじゃねぇよ」 「…………」 「敵との力量差くらい、正しく判断した方がいいぞ。現実をみたくない気持ちは、分からなくもないがな」 ――途端。 「おい」 今まで俺と江本のやり取りを静観していた黒服の一人が、声を荒げた。 「黙って聞いてりゃ……なめた口叩いてんじゃねぇぞ、クソガキが!!」 荒々しい怒号と共に、奴は俺の胸倉に掴みかかってきた。 申し出を切り捨てたことに腹を立てたのか、それとも暴力団を前にしての俺の態度に堪忍袋の緒が切れたのか。 「……今は交渉中の筈だが」 「自分の立場が分かってねぇな。俺達とテメェは対等じゃねぇ。これは交渉じゃなくて命令だ」 「それは、こんな幼気な少年に命令しなくちゃならない程、追い込まれてるって言いたいのか?」 「【鴉麻万凶】を始末しないと、俺達が危ねぇ。使えるもんは使うのは当たり前だろうが」 「御宅等が危ないのは、自業自得だろ。俺を巻き込むなよ」 「……テメェ、マジで今すぐブチ殺すぞ」 「それは困る」 ならば仕方ない。 ジャケットの裏側に隠し持っ ていた警棒を取り出す。 一触一絶――【葵】 黒服の腹部に押し当てスイッチを入れると、稲光のような青白い閃光と、衣服を引きちぎるような鈍い音が発生。 大型猛獣でさえも一撃で仕留める強力無比な電流の直撃を受け、黒服は狂ったかのように体を痙攣させ、膝から床へと崩れ落ちる。 その間に、閃光に目のくらんであいた他の黒服二名の頭部を警棒で殴り飛ばし、昏倒させた。 豪勢なカーペットの上に、気絶した3人の人間が転がる。 「――味方になるかどうか不明確な相手を呼び出すにも関わらず、身体チェックをしないとはな」 【葵】の矛先を、江本へと向ける。 「そんな詰めの甘い奴が、そもそも小太郎君をどうこうできるわけねーだろ」   
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