3444人が本棚に入れています
本棚に追加
「伝わらないならハッキリ言ってやる」
【葵】を構えたまま、江本を見据える。
「アンタ達程度の人間が、小太郎君を殺すのは無理だ。自殺行為でしかない。今すぐ、思い直せ」
「……それでは、我々に大人しく鴉麻万凶の報復を受けろと言うのですか?」
「そういうわけじゃない。とにかく、無謀な行動は慎めというだけだ」
「では、どうしろと?」
「さぁな。だが、彼女がプロだということはつまり、行動の根本は単なる営利目的になる。誠心誠意謝罪して、いくらか金を積めば今回の件を水に流してくれるかもしれない。違うか?」
「否定はできませんが、あまりに確証が薄いですね」
「だったら、俺が仲介役を買ってやってもいい。これでも、結構彼女に気に入られたみたいでね。俺なら、その辺を巧く取り合えるかもしれない」
「…………」
「それが嫌ってんなら、冷静な判断が出来るようになるまで、しこたま電流を喰らわせてやるよ」
その脅しに江本は、しばしの空白を置き大きく肩を竦めた。
心底残念そうに。
「……あくまで邪魔をなさるおつもりですか」
「違うな。引き留めてやるんだ。お前等が馬鹿な真似をしないように」
――そうですか。と苦笑交じりに言葉を漏らす江本を見て、妙な違和感を感じた。
そうだ。
そういえば。
何故だ。
おかしい。
何故こいつは、まだ悠長にソファーに座ってられるんだ?
ものの数秒で、3人――この場にいる黒服の半分を気絶させてやったんだぞ?
だというのに、どうして江本はこんなにも余裕でいられる。
他の黒服も、特に慌てている様子も――――、
そこまで考えた時だった。
最初のコメントを投稿しよう!