【第一話】

14/54
前へ
/175ページ
次へ
DDはカウチソファで寛いでいた。 ソファはブラックの本革に、クッションはダークグレーのモダンな逸品。サイドテーブルを挟んで前後に二つあり、それぞれが俺の年収よりも高額だ。ひしひしと格差社会を痛感する。世の中何か間違ってるよ。 気を抜くと前後不覚に陥りかねない悪魔の美貌は今日も健在。白シャツと黒プリーツの組み合わせがまた秀逸で、メラニン色素の薄い白銀の髪と良くマッチしている。 右手には琥珀色の液体がなみなみ注がれたティーカップ。ソーサーは彼女の眼前にあるサイドテーブルにポツリと置かれていて、寂しげに相棒の帰りを待っていた。 「座ったら」 言ってDDはティーカップに口をつける。 「あぁ」 拒否する謂われはない。俺は勧めに従い、対面のソファに座る。 「それでDD―――」 「そう焦らないで」 彼女の特異な双眸が柔らかな線を描く。 「長旅お疲れだったでしょう。一服に紅茶でもいかが? 淹れ立てのアールグレイがあるのよ」 空々しい台詞。渇いたスマイル。こういう時のコイツが一番信用ならない。 「何企んでやがる」 「企むなんて心外だわ。ねぎらっているだけよ。“親友”のアナタがこうして来てくれたんもの。迎えるのは当然でしょ?」 クソッタレ。 「……全部、【視て】たのかよ」 DDの微笑が深みを増す。 「親友とは言い得て妙よね。さすが詠だわ」 “冗談がとってもお上手”
/175ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3444人が本棚に入れています
本棚に追加