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DDはカウチソファで寛いでいた。
ソファはブラックの本革に、クッションはダークグレーのモダンな逸品。サイドテーブルを挟んで前後に二つあり、それぞれが俺の年収よりも高額だ。ひしひしと格差社会を痛感する。世の中何か間違ってるよ。
気を抜くと前後不覚に陥りかねない悪魔の美貌は今日も健在。白シャツと黒プリーツの組み合わせがまた秀逸で、メラニン色素の薄い白銀の髪と良くマッチしている。
右手には琥珀色の液体がなみなみ注がれたティーカップ。ソーサーは彼女の眼前にあるサイドテーブルにポツリと置かれていて、寂しげに相棒の帰りを待っていた。
「座ったら」
言ってDDはティーカップに口をつける。
「あぁ」
拒否する謂われはない。俺は勧めに従い、対面のソファに座る。
「それでDD―――」
「そう焦らないで」
彼女の特異な双眸が柔らかな線を描く。
「長旅お疲れだったでしょう。一服に紅茶でもいかが? 淹れ立てのアールグレイがあるのよ」
空々しい台詞。渇いたスマイル。こういう時のコイツが一番信用ならない。
「何企んでやがる」
「企むなんて心外だわ。ねぎらっているだけよ。“親友”のアナタがこうして来てくれたんもの。迎えるのは当然でしょ?」
クソッタレ。
「……全部、【視て】たのかよ」
DDの微笑が深みを増す。
「親友とは言い得て妙よね。さすが詠だわ」
“冗談がとってもお上手”
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