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◇ ◇ ◇
【借金をしますか】
YES or NO
――――――――――――
俺がDDと出会い、そして莫大な借金を背負う羽目になったのは約半年前。記録的な猛暑に見舞われた八月の事である。
DDに賭け事で負けた。借金の経緯はたったそれだけの事。ギャンブルに執心している輩がいずれ必ず辿るであろう天罰が、その日偶々俺を裁いたのである。自業自得。情状酌量の余地なし。
“よって判決は死刑デス”
二億飛んで七十二万と四千六百円。その日俺が負った借金の総額である。勉強量としては些か以上に割高だ。家どころか命だって買える、そんな法外のカネ。
カネ、カネ、カネ、カネ、カネ
カネは天下の回りモノ
時としてカネは命よりも重くなる。事実、俺は二億というカネの前に自身の所有権を失った。
自由もプライベートも意志決定も全部悪魔に奪われた。
後に残ったのは空っぽの器だけ。
DDのいう通りに動き
DDに日夜監視され
DDにカネを返す為に働き続ける無様な無機物
今の俺はDDの家畜だ。奴隷だ。人形だ。間違ってもヒトじゃない。生きていても活きちゃいない。
そんな日々を六ヶ月。死にたくなった事も死にそうになった事も多々あった。
それでも俺はここに“いる”
善悪ではなく、あくまで原因に対する結果としてここにいるのだ。
死にたくても、死にそうになっても、例え活きていなくとも。それでも生きてる限りは生きてやる。
それが生物の権利だし、また義務だと俺は思う。
……なんて。我ながら吐瀉物を吐きたくなるような恥ずかしい思想だ。俺、死ね。
◇ ◇ ◇
「――ねぇ京介、殺人は悪かしら」
DDがその話を切りだしたのは、俺がみっともなく喚き散らし、結局打ち負かされた後の事だった。
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