【第一話】

16/54
前へ
/175ページ
次へ
  ◇  ◇  ◇    【借金をしますか】     YES or NO   ―――――――――――― 俺がDDと出会い、そして莫大な借金を背負う羽目になったのは約半年前。記録的な猛暑に見舞われた八月の事である。 DDに賭け事で負けた。借金の経緯はたったそれだけの事。ギャンブルに執心している輩がいずれ必ず辿るであろう天罰が、その日偶々俺を裁いたのである。自業自得。情状酌量の余地なし。 “よって判決は死刑デス” 二億飛んで七十二万と四千六百円。その日俺が負った借金の総額である。勉強量としては些か以上に割高だ。家どころか命だって買える、そんな法外のカネ。 カネ、カネ、カネ、カネ、カネ カネは天下の回りモノ 時としてカネは命よりも重くなる。事実、俺は二億というカネの前に自身の所有権を失った。 自由もプライベートも意志決定も全部悪魔に奪われた。 後に残ったのは空っぽの器だけ。 DDのいう通りに動き DDに日夜監視され DDにカネを返す為に働き続ける無様な無機物 今の俺はDDの家畜だ。奴隷だ。人形だ。間違ってもヒトじゃない。生きていても活きちゃいない。 そんな日々を六ヶ月。死にたくなった事も死にそうになった事も多々あった。 それでも俺はここに“いる” 善悪ではなく、あくまで原因に対する結果としてここにいるのだ。 死にたくても、死にそうになっても、例え活きていなくとも。それでも生きてる限りは生きてやる。 それが生物の権利だし、また義務だと俺は思う。 ……なんて。我ながら吐瀉物を吐きたくなるような恥ずかしい思想だ。俺、死ね。   ◇  ◇  ◇ 「――ねぇ京介、殺人は悪かしら」 DDがその話を切りだしたのは、俺がみっともなく喚き散らし、結局打ち負かされた後の事だった。
/175ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3444人が本棚に入れています
本棚に追加