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玄関の戸を開けると、いきなり刺すような冷風が身を突いた。
「おっ、おぉ」
アラート、アラート、アラート!
全身が小刻みに震え出す。
確かシバリングっていったっけか。寒いときのブルブルは体温の低下を防ぐために身体が頑張っている証拠らしい(とこの前読んだ雑学本には書いてあった)。
揺れろ、縮こめ! 体温の未来は任せたマイボディ!
良くわからないエールを送りながら、重い身体を移動する。玄関から外へ、はじめの一歩を達成する。
ドアを閉め、鍵穴に鍵をねじ込む。ガチャリ。役目を終えたマイキーを引き抜き、ジーンズの右ポケットへポイッと。ついでにドアノブを回して施錠を確認。オールグリーン。
…………さて。
「…………帰りたい」
外出早々偲ぶのは、愛しい我が家の万年床。
帰りたい。というか眠りたい。
そりゃあ目に飛び込んでくる朝焼けの白光は綺麗だし、冷たい冬の空気も嫌いじゃない。仮に目的地がコンビニか何かだったとしたら、きっと二月の景観を堪能しつつ、ウキウキ気分で行く手に赴いていただろう。
しかし、俺の目的地は【城】である。泣く子も黙る【魔王の城】だ。
【Eメール一件受信】
2/12 6:15
from DD
―――――――
携帯のディスプレイに表示されている先程のメール。差出人は悪逆非道の大魔王。
……嫌だ。
あんな奴に会いたくない。
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