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『ハーイ京介。バレンタインのお返しはまだかしら? 美味しいベルガモットが冷めちゃうわ』
聞き慣れた主の声はいつも通りに良く喋る。というかお返しって何だよ? それを言うなら
「仕返しの間違いだろ。残念ながら小石に付けるカカオが無い。付け足しておくと金もない。はっ、たかる相手を間違えたな」
『あらどうして? 先の仕事であなたにも幾分余裕が出来たんじゃない? ギャンブルでもやらない限り、ホワイトデーの贈り物ぐらいわけないでしょう』
痛いところをついてきやがる。
「……【視て】なかったのかよ?」
『最近はやたらと忙しくてね。フォーラムでの会議とか管轄先の経営とかまぁ色々と。だからあなたばかりにかまけてもいられないのよ。ごめんなさいねダーリン』
「ふぅん」
などと相槌を打ちつつ、俺は別の事を考えていた。
今日は三月十四日。世間をのさばるホワイトデーなぞという退屈な祭典はさておいて、今日は。
「今日はあの日だっけか」
『京介の割には良く覚えていたわね。そう、あの日よ』
やっぱりあの日か。んでもってこのタイミングでの着信。あぁそうかいDDよ。
「俺はどこに行けば良い」
『蕗場公園を適当に散策しなさい。きっと素敵な女性に出会えるわ』
「そりゃあ楽しみだ」
麗らかな春の陽気と見渡す限りの青い空。こんな日の午後は良い女とのデートに限るってもんだ。
『それじゃあ京介』
「あぁ」
一丁ナンパといきますか。
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