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「ふぁれひょうふへ」
絶賛げんなり中の俺の耳にもごもごしたソプラノが通り抜ける。
サーモンピンク。
桃色の長髪が寒空を舞う。
「――詠ねえ」
オウシベヨミ
“桜蕊詠”お隣さんは玉子サンドを頬張りながら微笑んだ。
「ふぁふぉふぁふぁ、ふぉふふぁふぁふひぃふぇふぅふぁ」
「詠ねえ、飯食ってから喋ろうぜ」
んっんっと二度頷くと詠ねえはものの数秒で手持ちの食べ物を平らげる。
「変なところ見られちゃった」
「見ちゃった」
わははと二人して笑う。
「はろー京介、朝早いじゃない」
「おはよう詠ねぇ、朝から慌ただしいね」
「あぁコレ?」と詠ねえは、トートバックから空の容器を取り出した。
「珍しく調理なんてしてみたらコレが思いの外出来が良くってね、朝食と昼食に分けていただこうと思っていたんだけど気づいたら……この有り様っす」
「うぅっ、体重がぁ、BMIがぁ……」とさめざめ嘆く詠ねえのスタイルは、しかして全く太ってない。
むしろスラリとスリムな長身は、外国のファッションモデルのように洗練されていて、思わずこちらがドキリとしてしまう程だ。
女子と体重の関係は神秘に満ちている。
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