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「もう一つ良いか」
「何でしょう」
今度は純粋な興味をぶつけてみる。
「整形手術ってさ、そんな簡単に退院できるわけ? ほら抜糸やらダウンタイムやらって時間かかるんだろ」
整形っていうのは手術して直ぐに綺麗になるものではない。腫れの収まりや、皮膚の修復など再生までには相応の期間を必要とするものだ。彼女の場合、存在を作り替える程の大手術を施されたのだ。退院まで一カ月というのは、些か短すぎる。
「私も詳しくは知らないのですが」
彼女は控え目な枕詞を置き
「鞍柘の先端技術は、技術革新の指数関数的傾向を常に逓増しているのだとお医者様は仰っていました」
「凄い早さで技術発展が進んでいるって事か」
今や鞍柘の技術水準は世界でもトップレベルに達している。噂では超電導エネルギーの実用化やタイムマシンの開発に関する枠組みがあらかた完成したのだとかなんとか。住み慣れている街の特異さに気づかされる瞬間だ。
「私からも一つ良いですか」
かつてのソレとは違う女性の声が耳を撫でる。
「何でも聞いてくれ。知ってる範囲で答えるよ」
質問するだけじゃフェアじゃない。訊いて答えてこそコミュニケーションなのだ。
「それでは遠慮なく」と彼女。
「あなたは何故私を殺したのですか」
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