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「なぁ、おにーちゃん。おにーちゃんは、神様ってのを信じてるか?」
季節は12月。冬。
定期的にその車体を揺らしながら快適に道路を走行する市営バスの中。
もう真夜中だからか、片手で数える程しか乗客のいない車内をグルリと見渡しながら、彼――鴉麻小太郎君は、そんなことを尋ねてきた。
「……突然だな。どうしたんだよ、小太郎君」
「どうしたもこうしたも、何も見えねぇ外の景色を只眺め続けてるのも、いい加減飽きてきただけさ」
小太郎君の横顔を経由して、窓の外へと視線を向ける。
あぁ、成程確かに。
窓の外は真っ暗。これでは、景色を楽しむも糞もあったもんじゃないだろう。
「このまま暇を持て余すくらいなら、おにーちゃんと下らない世間話でも並べてた方が、まだマシだと思ったわけよ」
「軽く馬鹿にされたように聞こえたのは気のせいか?」
「心外だな。オレはいつだって自分以外の他人を馬鹿にして生きてるぜ?」
「……まぁ、いいけど」
にししっ、と悪戯っぽく笑う小太郎君の顔を見ると、追及する気が削がれてしまったし。
それに、実をいうと、俺も暇を持て余していたところだ。
我が家の最寄りのバス停に到着するまで、まだ結構時間はある。暇つぶしには、丁度良いのかもしれない。
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