【第一話】

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「詠ねえはこれからどこへ? 大学で勉強か?」 「んー……半分正解かな。大学には行くけど講義は受けない」 「じゃあ、何しに?」 サークル活動の類だろうか。進学していない身分としてはどうにも興味深い話だ。 大学は勉強以外に何をするんだ? 「教授にねー」詠ねえは大儀そうに、 「講義してあげるの」 「……………………はっ?」 教授に? 講義を? シテアゲル? 「詠ねえってさ」 「うん」 「今年十九だよな」 「三月でね」 …………一年生じゃん。 「この前経済学の授業で適当なモデルケースにオリジナルの公式を作って遊んでたら、担当の教授が『それは何だね』ってしげしげ眺めてきたの。それでとりあえず論理的に矛盾の無い答えをでっち上げたら『これはとんでもない大発見だ』とか騒いじゃってさぁ」 「高々冗談にマジになっちゃって馬鹿じゃないのアイツ」とぶぅたれる詠ねえ。 ぶっ飛んでんなぁ。 容姿にしろ、髪色にしろ、スペックにしろ相変わらず桜蕊詠はぶっ飛んでる。 朝焼けに煌めく桃色のサイドテールのなんと眩しいこと。
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