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「おにーちゃん、馬鹿じゃねェの? 神様はいるさ。いるね。いるに決まってる。24時間365日オレ達人間のことを空の上から見守ってくれてるに違いねェだろ」
他人考えを否定するだけに飽き足らず、嘲笑して足蹴にしたその言葉には、流石の俺も少しムっときた。
「……君が俺と真逆の考えだってことは分かった。だけれども、だったら、どうしてそこまで断言できるのか、是非ともその理由を教えて欲しいもんだ」
「教えるもクソも、おにーちゃんが自分で言ってたんじゃねェか」
「何?」
「今の世の中、貧富の差は激しい上に、戦争もなくならねェ。病気で苦しんでいる奴もいれば、悪質な犯罪は増加する一方。世界がマシになる兆しなんて全く見当たらない――だっけか? おにーちゃん、そう言ったよな?」
「あぁ。そんな世の中をからこそ、神様なんていないという良い証明になったんじゃないか」
「ひひっ。そういう所に反吐が出るって言ってんだよ、オレは」
狂喜の笑みに満ちた小太郎君の顔が、グイッと近付けられた。
吐息がかかりそうな距離。
今にも、喉に噛みつかれそうな距離。
妙な圧迫感が、全身を包み込んでくる。
「もっと真面な視点に立って考えてみようぜ、オイ。"神様がいるから、世の中はその程度で済んでる"のさ」
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