3444人が本棚に入れています
本棚に追加
/175ページ
「人間をそこまで卑下して捉えて、ニヒルを気取るのはそんなに楽しいか?」
「あァ? なんだなんだ。やけに突っかかってくるじゃねェか、おにーちゃん。言っただろ? これは時間を潰すのが目的の他愛もない思考ゲームなんだぜ? そんなに躍起にならなくてもいいじゃねェか」
確かにそうだ。
まったくもって、全面的に小太郎君の言う通りだ。
けれども。
やはり。
どうしても、俺は神様なんてものを認めるわけにはいかない。
認めたくない。
これは意地だ。下らなくて醜い、ただの安いプライド。
だって。
だって神様は、葛城杏奈を救ってくれなかったから。
彼女を、殺してもくれなかったのだから。
「……あぁ。やっぱ可愛いなァ、おにーちゃんは」
「……は?」
ふいに、隣の小太郎君の口から溜息が漏れた。それは、風船の空気が抜けるかのような、あまりに脱力的な嘆息だった。
「近年稀に見る愚直さだ。だけど、それがいい。一部のコアなマニアックが、涎垂らして喜ぶレベルだ。愚かで真っ直ぐな人間は、存在だけでも価値がある」
「何を急に――」
「なぁ、おにーちゃん」
開こうとした俺の口が、小太郎君の人差し指によって止められる。
「じゃあさ、こうしよう。質問を変えるぜ」
小太郎君の笑みは――消えない。
最初のコメントを投稿しよう!