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「おにーちゃんは、今日死にかけた。殺される一歩前まで接近していた。そうだな?」
「…………」
「そこを、このオレの慈悲深い心で救われたわけだ。おにーちゃんは、オレのおかげで運良く命拾いをした。偶然に偶然が重なりあった奇跡。生き残る僅かな確率に、おにーちゃんは奇しくも勝った」
否定は、しない。
というより、出来ない。
まさにその通りだからだ。
俺は"あの時"、殺されていてもおかしくはなかった。
それを、小太郎君の気まぐれによって、俺は生かされた。
「この場合さ。おにーちゃんは一体誰に感謝するんだ? 神様か?」
違う。
神様なんて、認めない。
俺は神様なんていないと考えてる。
存在しない奴に感謝することなんて、出来やしない。
だから、俺は、
「――それとも、オレに感謝するのか?」
俺は―――
「――おにーちゃんを殺そうとした張本人である、このオレに」
◇ ◇ ◇
――時刻は、午後11時10分。
何故、俺こと沢木京介が、この奇妙で危険な少年・鴉麻小太郎と市営バスに乗り合わせることになったのか。
その原因は、小一時間ほど前に遡る。
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