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つっても、どちらにせよ、あの男性が死んでるってことは確信していたけれど。
何せ、道路を覆う程の血が溢れ出ている。出血。まさに血の海。どう見ても、あれは致死量だ。死に至ってしまう量の血。死んでいるに決まってる。
「つーか、おいおい。まさかまさかとは思うが、おにーさん。"犯罪は犯しちゃいけません"なんて、そんな身震いするような台詞を吐くつもりじゃあないだろうな? 冗談じゃねェよ。寒いのは気温だけにしてくれ」
「まぁ、吐くつもりはねーけど」
俺も諸事情により、大なり小なりの犯罪は犯している。
そんな人間が、紙みたいに薄っぺらい高説を唱えられるわけがない。
ともあれ。
「それでも、殺人事件なんてもんを生で目撃してしまった俺は、とてもじゃないが良い気分にはなれねぇんだよ。まったく迷惑極まりないぜ」
「知らねェな。どうしてオレが一々見知らぬ他人のご機嫌を伺わなきゃならねェんだよ」
「そもそも、人を殺すなら、誰にも見つからないように、証拠も残さないようにするのがセオリーじゃないのか」
「返す言葉もねェが、何せ急なことだったからな。白昼堂々やらざるを得なかったのさ」
「今は夜だけどな」
「上げ足取るなよ、小せェ男だな、おにーちゃん」
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