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「そういう京介こそこれからどこに? 夜型の君が早朝からお出かけなんて珍しいじゃない?」
「あぁ……」
うん。そうだよな。俺もそう思う。
本来ならばこの時間は、俺の大事な熟睡タイム。
仕事終わりの疲れを熱いシャワーで洗い流し、肌触りの良い白シーツとアイダーダックの羽毛布団に包まれながら夢心地。濃密で温柔な時間を存分十全に満喫して、気づけば身も心もリフレッシュ……。
「……リフレッシュの筈だったんだ」
あんなメールさえなければ。
【受信メール一件】
2/12 6:15
from DD
sub 今から
本文
家へ来なさい
―――――――――――
忌々しいメール、可愛くなくて憎さだけが百倍の毒メール。
無視したい。すっぽかしたい、眠りたい。
「ねぇ京介、京介の行き先ってひょっとしたらDDのとこ?」
「残念なことに」
認めたくない現実を苦々しく噛み締めながら首肯する。
Eメールを開いた瞬間に俺の安穏は終わったのだ。
無視なんて出来ない。
シラなんてきれない。
嘘なんて論外だ。
一度【メールを開いた事実】を作ってしまった以上、奴の【目】は全てを見通す。
DDはごまかしの通じる相手じゃない。
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