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背中の上で、ゲラゲラという笑い声が聞こえる。どんだけ楽しそうなんだよ。その内、地団駄の要領で蹴られそうだ。
「生殺与奪の権を握られた以上、殺される人間は、殺す人間を楽しませなきゃならねェからな。おにーさんは、その辺をよォく分かってやがる。オレは今、それなりに楽しんでるぜ」
「……そりゃ重畳だ」
奇しくも、長い奴隷生活の中で得た経験だったりする。
故に、あまり誇れることではないのだが。
「アンタ、長生きするぜ。しぶとく醜悪に、誰よりも無意味に生き続けるだろうさ。このオレが保障してやる」
「生き残れても、活きることは出来ないってか。よく言われるよ。……で、それよりも、だ」
「あァ?」
これ以上話が延びるのは、俺としても流石にうんざりだ。
そろそろこちらも本題に入らせてもらう。
「アンタは――結局どうしたいんだよ」
「どうしたいって……は? 何が?」
「とぼけるな。もし本当に俺を目撃者として殺す気なら、とっくにそうしてるだろ。こうして俺を生かしてるのは、何か理由があるからなんじゃないのか?」
「んァ? ……んだよ、おいおい。それも気付いてたのか。人が悪ィなおにーさん」
「そりゃどうも」
「ま。おにーさんの反応が一々面白ェから、柄にもなく、ついつい話が弾んじまったってのも半分だがな」
ヒヒっ、と少年の口から笑いが漏れる。
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