【第二話】

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「初めまして、おにーちゃん」 俺に向かって、手を差し出している少年の姿があった。 この瞬間、俺はようやく……という言い方は変かもしれないが、初めて少年と"出会った"気がした。 先ほどまでのは――そう。 単なる出遭い。 事故に近い、まさに遭遇。 それが今、真正面から彼と向き合うことで、"出会い"に昇華した。そんな気が。 「オレの名前は鴉麻小太郎。見ての通り、キュートな殺人犯だ。訳あって、ちィと追われてる」 150前後らしき、非常に小柄な体格。白いメッシュの入った、漆黒の髪。獣のような鋭い切れ長の瞳。頬には、猛獣に引っ掻かれたかのような生々しい古傷。全身を包み込むような、不釣り合いに巨大なコート。 「そこで、双方共に利益のある素敵な取引だ」 どこか野性的な彼は、俺という存在を見下すように眺めながら、続けた。 「アンタを殺さないでやるから――しばらくの間、オレを匿いな」 「…………」 「さァ、どうする?」 どうやら。 悪魔だけでも手一杯だってのに、今度は殺人鬼と契約しなくちゃならなくなったらしい。 つくづく、俺の人生は退屈しない。大きく屈折しているけれども。 ―――――。image=504496573.jpg
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