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「初めまして、おにーちゃん」
俺に向かって、手を差し出している少年の姿があった。
この瞬間、俺はようやく……という言い方は変かもしれないが、初めて少年と"出会った"気がした。
先ほどまでのは――そう。
単なる出遭い。
事故に近い、まさに遭遇。
それが今、真正面から彼と向き合うことで、"出会い"に昇華した。そんな気が。
「オレの名前は鴉麻小太郎。見ての通り、キュートな殺人犯だ。訳あって、ちィと追われてる」
150前後らしき、非常に小柄な体格。白いメッシュの入った、漆黒の髪。獣のような鋭い切れ長の瞳。頬には、猛獣に引っ掻かれたかのような生々しい古傷。全身を包み込むような、不釣り合いに巨大なコート。
「そこで、双方共に利益のある素敵な取引だ」
どこか野性的な彼は、俺という存在を見下すように眺めながら、続けた。
「アンタを殺さないでやるから――しばらくの間、オレを匿いな」
「…………」
「さァ、どうする?」
どうやら。
悪魔だけでも手一杯だってのに、今度は殺人鬼と契約しなくちゃならなくなったらしい。
つくづく、俺の人生は退屈しない。大きく屈折しているけれども。
―――――。![image=504496573.jpg](https://img.estar.jp/public/user_upload/504496573.jpg?width=800&format=jpg)
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