【第二話】

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何故なら、あの殺人事件が【南区】で起こった事件であるから。   ◇  ◇  ◇ この鞍柘市は、端的に説明をすれば、日本を創り変えることを目的とした行政特区だ。 それ故に、鞍柘市が日本の"中心"となり得ることは必然だと言える。 一つの国を創り返るという壮大なプロジェクトに、日本は勿論のこと、世界からも熱烈な注目が集められる。 結果、大企業は挙って鞍柘市に足を踏み込む。日本中の膨大な情報も鞍柘市に集まる。多くの研究施設もが鞍柘市に集結する。 首都を軽く超越する程のカネや労働力、消費者、権力、優秀な人材、技術、情報等々、ありとあらゆるモノがパンク直前まで入り込んでくる――まさに、日本が持てるモノ全てを注ぎ込んだ結晶の街。 そこまでは良い。 だが、ありとあらゆるモノが入り込んできたとして、果たしてそれらが全て一緒くたに混ざり合うか――と問われれば、答えは当然、否である。 例えば、権力と暴力は対立する。 例えば、消費者と生産者は相対する。 一つになることは、ない。 ――だからこそ、鞍柘市はモノを分けた。 混ざり合わないモノを各々区画化することで独立させ、分けざるを得なかった。 それこそが――先述した【区】。 8つの区に、鞍柘市に集められた全てのモノを分散させたのである。
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