【第二話】

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――――――。 「そういえば、ずっと気になってたんだけどさ、おにーちゃん」 それは、電光掲示板に流れるニュースが、明日の天気予報に変わり、俺達の目的のバス停を次に控えた頃のことだった。 「なんだよ、小太郎君」 「いや、さ。おにーちゃんは、なァんで南区なんかにいたんだ? 鞍柘市の住人なら、南区がどんだけイカれた区なのか熟知している筈だろ」 「…………」 「フツーの人間なら、危険地帯に自ら足を踏み入れねェ。ましてやおにーちゃんは、中区の人間。……何か、込み入った事情でもあったのか? ん?」 と言っている小太郎君の表情には、別段、好奇心の類は見受けられない。 この質問もおそらく、彼の中では"時間潰し"程度の行為なのだろう。 「残念ながら、込み入った事情なんてものはねーよ。ちょっとクソッタレなご主人様にお使いを頼まれてきただけだ」 マイナスは二十。 南区に在住している顧客から、依頼料の前金を受け取るだけの簡単で割りの良い仕事――の筈だったんだが。
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