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夜道を小太郎君と並んで歩きながら、軽い会話を交わす。
既に深夜だからか。周りには俺達以外の人間の姿はなく、不気味な静寂に包まれていた。
ただ、俺と小太郎君の声、そして二人の靴とアスファルトが擦れる音が響くのみ。
「あ。そういえば、俺も聞いておきたいことがあるんだけどさ」
「何だい、おにーちゃん」
突発的な俺の投げかけに、小太郎君は首を傾げながら応える。
二人の足は、止まらない。
「小太郎君、確か、訳あって追われてる――とか言ってたよな。それで、図々しくも俺の大事なプライベート空間に匿われようとしてるわけだ」
「言い方に棘があるなァ、オイ」
「不本意ながら、もう俺は君と無関係じゃない。別に懇願までするつもりはないけど、その辺の事情を教えてくれてもいいんじゃないか?」
こうなった以上、俺にも、現状を知る権利や必要があると思うのだ。
「んー」
対する小太郎君はというと、眉間に皺をよせ喉を唸らせていた。
迷っている、悩んでいるというより――面倒くさがっている、そんな類の表情だった。
「おにーちゃんよォ。オレ、一応殺人犯だぜ? そんな奴の事情を進んで聞こうとするなんて、普通は有り得ないんじゃねェか?」
「時には好奇心を優先してみることもある」
「……ま、おにーちゃんがいいならいいけど」
ふぅ、と肩で息を漏らし、『どっから話せばいいかなー』と頭を抱えていたが、数秒の後、
「じゃあ、おにーちゃん」
「ん?」
「――【壊し屋】って名前に聞き覚えはないか?」
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