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壊し屋?
なんだそれ。
「いや、すまん。聞き覚えはないな」
「……あー、ないのか。んだよ、オレもまだまだだな」
「え?」
「何でもねェよ」
少し不機嫌そうに……というより、拗ねたように吐き捨てる小太郎君。
「壊し屋ってのは、言ってみりゃ、殺し屋を多角化したモンだな。依頼を受けて、何でも壊す。人であろうと、物であろうと、関係であろうと、ルールであろうと、どんなものでも完膚なきまでぶっ壊す請負職業――それが【壊し屋】だ」
「へぇ」
そんな仕事があったのか。
破壊専門の便利屋みたいなものなのだろうか。
「……で? その壊し屋ってのがどうかしたのか?」
「おいおいおいおい。鈍ィ男は嫌われるぜ、おにーちゃん。フツー気付くだろ」
「?」
「壊し屋は――オレの職業だ」
「……あー」
……成程、な。
そういうことか。
「キュートな笑顔と誠実さがモットー、巷で噂の若手壊し屋・鴉麻小太郎とはオレのことよ」
親指で自身を指差しながら、誇らしげに名乗る小太郎君。
「…………」
「あ、名刺か? 欲しいならやるよ。今なら割引券も付けとくぜ」
「い、いや、遠慮しておく」
小太郎君が、コートのポケットから名刺を取り出し、手渡してきたが、それは丁重にお断りしておいた。
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