【第二話】

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壊し屋? なんだそれ。 「いや、すまん。聞き覚えはないな」 「……あー、ないのか。んだよ、オレもまだまだだな」 「え?」 「何でもねェよ」 少し不機嫌そうに……というより、拗ねたように吐き捨てる小太郎君。 「壊し屋ってのは、言ってみりゃ、殺し屋を多角化したモンだな。依頼を受けて、何でも壊す。人であろうと、物であろうと、関係であろうと、ルールであろうと、どんなものでも完膚なきまでぶっ壊す請負職業――それが【壊し屋】だ」 「へぇ」 そんな仕事があったのか。 破壊専門の便利屋みたいなものなのだろうか。 「……で? その壊し屋ってのがどうかしたのか?」 「おいおいおいおい。鈍ィ男は嫌われるぜ、おにーちゃん。フツー気付くだろ」 「?」 「壊し屋は――オレの職業だ」 「……あー」 ……成程、な。 そういうことか。 「キュートな笑顔と誠実さがモットー、巷で噂の若手壊し屋・鴉麻小太郎とはオレのことよ」 親指で自身を指差しながら、誇らしげに名乗る小太郎君。 「…………」 「あ、名刺か? 欲しいならやるよ。今なら割引券も付けとくぜ」 「い、いや、遠慮しておく」 小太郎君が、コートのポケットから名刺を取り出し、手渡してきたが、それは丁重にお断りしておいた。
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