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「クズ共の考えなんざ、オレの知ったこっちゃねェけどな。とにかく、殺されそうになった以上、オレも壊し返してやるのが礼儀ってもんだろ」
「……殺したのか?」
「その場にいた奴4人をな。片手で数えられる程度の人数で、オレを殺せるとでも思ってたってのが笑えるよな」
「もしかして、俺が目撃したあの殺人現場って……」
「あァ。事務所から逃げ出した野郎が一人いたから、追っかけて壊してやった。あの時はオレも苛立ってたからなァ。まさかおにーちゃんに見られるとは思わなかったぜ」
小太郎君の声には抑揚が欠片も無い。それが、どことなく不気味だった。
「勢いに任せて壊したのは良いんだけどさ、ゴクドーってのは面倒なんだよ。関係者一人でも殺せば、芋蔓みてェに仲間がワラワラ湧いて出てきやがる。返り討ちで根絶やしにしてやりたいのは山々だが、流石の俺にも休憩は必要だ」
「結果、俺に匿ってもらおうとしたってわけか」
「ご名答」
「成程」
納得と言えば納得だ。
これでようやく、俺が巻き込まれた一連の流れに辻褄があった。
つまるところ、偶然と偶然の数奇な重なりってわけか、まったく。
――と、ここで丁度、
「あ。小太郎君、ストップ」
慌てて、隣を歩いていた彼を呼び止める。
目の前には、築年数は新しいにも関わらず、どこか外観が古風なアパート・白樺荘。
すなわち、我が家に到着していた。
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