【第二話】

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  ◇  ◇  ◇ 「おにーちゃん、シャワー貸してくれ、シャワー」 我が家に踏み込むやいなや、真っ先に小太郎君が口にした言葉がそれである。 「こう見えてもオレ、結構汗クセーと思うんだわ。やっぱ、せっかく宿に泊まるわけだし、サッパリしたいじゃん?」 「それを言うなら、血生臭いの間違いじゃないのか? ……まぁ、いいよ。好きに使ってくれ」 「サンキュー……って、おォ!マジか!ユニットバスじゃなくて、ちゃんとセパレートタイプじゃねェかよ!流石おにーちゃん、分かってるゥ!」 浴室の方から、歓喜の声が響いてくる。 ……何この子。どうしたの? 急に凄いテンションの上りようなんだけど。 「風呂とか布団とか、リラクゼーションに必要なものには、手を抜かない主義なんだよ、俺」 「そいつは最高だ!なァなァ、おにーちゃん!風呂沸かしていい? 湯船でゆっくりしてェよ!」 目を輝かせながら、そう訴えくる小太郎君は……うん。 先ほどまでの、ニヒルな笑みが似合う、捻くれものな彼とは大違いで。ギャップが激し過ぎて。 もう、俺としてはタジタジだ。 「あ、あぁ、いいよ。……というか、蓋開けてみな。今日は予め、湯張りを予約設定しておいたから、もう風呂は沸かされてるはずだけど……」 「ホントだ! よっしゃァァァ!おにーちゃん、愛してるぜ!」 小太郎君は着用していた大きなコートを脱ぎ、それを俺へと放り投げてきた。image=453839001.jpg
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