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ヒトシキ
「さて、と。一頻りからかった所で」
詠ねえはくるりと踵を返し、アパートの階段を降りていく。
カツン、カツンと二階から一階へ。コンクリの階段を伝う軽やかな靴音。
寒空の下にたなびく桜色のメロディ。小気味よく、心地良い歩みのリズム。
「何してるのよ京介ー? 途中まで一緒しよー」
おーい、という呼びかけに、あぁ、と答えて駆け降りる。
パーソナルスペースを守りつつ、詠ねえの隣へ。かじかんだ手を白い息で暖めるお隣さんと視線がピタリ。
「……どした?」
「……いや、何でもない」
行こうと促し、視線を背けた。
アスファルトを踏み抜く。
視界の先に捉えたのは遠隔の【城】
この【住宅街】の【王】
最も大きく、一際高い【選ばれし者の居城】
高さ421メートルの百十二階建、世界最高層を塗り替えたこの【街】の権勢の証。
恐らく超を何度重ねても足りない程の規格外の高層マンション。
AinSophAur
名は【000】
その頂に、DDはいる。
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