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そして、内側から脱衣所の扉が開かれた。
そこに居たのは、まぁ、当然の如く全裸の小太郎君。全身が風呂のお湯で濡れており、髪の毛から、お湯が滴り落ちている。
人懐っこい笑みを浮かべた彼は、『じゃ、借りるぜ』と一言添えて、俺の手からバスタオルを受け取った。
――たったそれだけ。
それだけの、数秒程度のやり取り。
だが、
しかし、
けれども、
「…………え」
"その数秒は、俺の思考を停止させ呆然とさせるには十分過ぎる時間だった"。
「…………」
「あ? 何固まってんだよ、おにーちゃん」
「……あ、いや。……その、あれ?」
「?」
巧く言葉が出てこない。
頭の中で発言のワードが固まらない。
そんな俺の様子を見て、小太郎君は怪訝そうに首を傾げたが、『変な奴だなァ』と言って、脱衣所の中に戻っていった。
扉が、目の前で閉められる。
取り残される俺。
「…………」
途端、膝から床に崩れ落ちる。
先ほど、脳裏に焼き付いた光景を思い出し、頭を抱える。
――性欲に身を任せないようにね。
DDのあの言葉が幻聴のように、聞こえてきた。
……うわぁ。
うわああぁぁぁぁ。
そういうことですか、DDさん。
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