不幸なハッピーエンド

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 「ああ、忘れねェうちに回収しとくか」  そう言って手を翳すと俺の額からなんか黒い塊が飛び出した。  「なんだこれ!?」  「いちいち騒ぐな」  頭からなんか飛び出して騒がない奴なんていないっての。  「これは私の術だ。前にお前にもってかれたんだよ」  「は?こんなもんもらった覚えないぞ」  「お前と初めてバトるちょっと前だよ、もっとも、私もあんときはお前だって気づかなかったが」  思い当たる節が1つある。  (あのときの黒い奴か)  鞍馬たちを苦しめた謎の術式。  俺を化け物に変えていたらしい“あれ”である。  「お前がやったのか?」  「ちゃんと話聞いてねェのか?もってかれたって言ったろうが」  こいつがやったんじゃないとしたら誰が……  「十中八九お前自身だろうよ」  「俺が?」  「無意識でなんかしたとしか思えねェ、てかそれくらいしかないってのが妥当か。無意識で神から術式ひったくるなんざぁ、どんだけ化け物っつー話だわな」  自分の中にある“何か”が術式を遥か100キロ以上離れた場所から引き寄せた。  そして問答無用で起動。  自分のことながら不気味で身震いした。  「まあ関係ねェだろ、いつかは分かるんだ。そのときまでほっとけ。考えてもムダムダ」
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