また声が聞こえた。
‐‐‐‐‐‐何をしている、こっちだ。
中性的で男か女か判断できないが、とにかく声が聞こえる。
今まで突発的な危機に曝されていたおかげか、アクシデントには強い自信はあたが、さすがに初めての経験に戸惑いを隠せない。
「どこだよ!」
‐‐‐‐‐‐もっと奥だ。
林の木々がまるで道を開けているかのように錯覚してしまうほどに、どっちに行けばいいかがハッキリと分かった。
正直、これ以上奥には進みたくはないというのが本音だ。
だが、このままではあの牛にミンチにされるか丸呑みにされるか…どっちにしろ楽には死ねないだろう。
(ええい、なんとでもなれ!)
助かるかもしれないという希望に縋り、どんどん奥へ進んでいく。
これが選択ミスにならないように祈りながら。
すでに牛は遠く離れてしまったようで自分ではほとんど感知することはできない。
ここがどこかはまったく分からないがなんとなく「こっちに行ったほうがいいのだろう」という漠然とした感覚に頼って走っている。
次第に森は深くなり、獣道すらなくなったのでまっすぐ走っているかすら分からなくなってきた。
‐‐‐‐‐‐急げ。
声はまだか、まだかと急かしてくる。
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