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取り敢えず、いつまでも部屋に居ても仕方ない。
そう思い立って僕は部屋を後にした。
「あら、おはよう。今日は早いのね」
「おはよう母さん」
「おはようお兄ちゃん♪」
「おはよう」
「お前もたまには早く起きるんだな」
「一言余計だよ父さん。おはよう」
…こんな他愛も無い会話は一体いつからしていないんだろう。
リビングには、いつもと変わらない静寂が立ちこめていた。
「おはよう、みんな」
その静寂の中を、僕の声だけが反響して微かに響く。
そしてその声は、弱々しく、ゆっくりと消えてしまった。
ほんの些細で限りなく幸せな家族との一刻。
僕の中からその幸せが消え去ったのは、まだ僕が物心のつかない幼い頃の事。
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