死にたがり

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僕達家族の旅行プランは、2泊3日の言わば、ごく普通の家族旅行だ。 でも、僕にとっては生まれて初めての事だったので、全てが新鮮で、例え様の無い出来事だった。 胸の高鳴りが幼い頃の自分でも分かったぐらいだ。 そんな、楽しいはずの旅行で1人、父さんだけは何処か険しい顔をしていた。 心配になった僕は、険しい顔をしている父さんに 「楽しくないの?」 と小さく声をかけた。 今思うと、その一言がいけなかったのかもしれない。 父さんは一瞬、とても辛そうな顔をしたけど、すぐに笑顔になって 「楽しくないわけないだろう?ただ、幸せすぎて怖いんだよ」 と優しくまた笑った。 僕は"幸せって怖いの?"って聞こうとしたけれど、止めた。 その時の父さんの顔があまりにも辛そうで、苦しそうで、聞くに聞けなかった。 そして、その時僕は初めて知った。 笑顔って怖いモノなんだと。
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