死にたがり

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「可哀想に…。子供1人置いて無理心中とは…。全く、惨い事するな…」 "けいさつかん"の人達がそんな事を話していた。 (むりしんじゅう…?) その頃の僕には、全くもって意味不明な言葉だった。 大体、僕は可哀想なんかじゃない。お父さんも、お母さんも、妹だっている。1人ぼっちじゃない。 その時は本気でそう思っていた。 気が付いたら僕は、親戚の伯父さんの所に居た。 そして何も分からないまま、真っ黒な服を着せられて、真っ黒な人達が一杯居る所に連れていかれた。 みんな下を向きながら泣いている。 そして僕を見るなり、みんなして僕に 「可哀想に…」 と頭を撫でながら言っていた。 意味が分からなかった。 ただ1つ覚えている事は、少し高い所に沢山の綺麗な白い花と、3人が笑っている写真がポツンと置いてあった事だけは、未だに鮮明に覚えている。 …それが僕の中の最初で最後の家族旅行だった。
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