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昼食も無事終了し、午後の授業のために教室へ向かおうとしたところ、普段はあまりならない携帯がなった。
表示されたのは槙の名前。珍しい呼び出しに内心焦りながら電話に出る。
「あ、もしもし…」
『悠くん、ちょっと今から駅の方まで来てもらえる?じゃあ。』
相手の有無を聞かずにキレた電話に驚いたが、何やら焦っているその口調になぜか心配になり、教室には向かわずに玄関へと急いだ。
慌てていたために逆に時間がかかってしまったような気がしたが…
駅へ向かってかけだしていた。
「突然呼び出してごめんね、実はこれから僕合コンなんだけどさ、正直そういうのだるくて。悪いけど僕の代わりにいってくれない?」
駅に着いて真っ先に槙から言われたことに、唖然となる。
思いも寄らないことを言われたからだ。
「…え…で、も」
ボクだって女の子は苦手だし、それに代わりだったら近藤や夏目の方がいいのではと考えたが…
「奴隷の分際で断るのかい?どうせ代わりだ、適当にあしらっておけばいい。」
槙はボクに行かせることを強制していた。しかも、
「ああ、あと、伊藤薫って女の子が来るんだけどその子の番号もらっといてね。」
それだけでいいから、と相変わらず冷酷に微笑む槙だったが、それだけのことがボクにとっては重労働だった。
「じゃあ宜しくね。もうすぐみんな来ると思うから、ここで待ってれば大丈夫。じゃあ。」
槙は立ち尽くしている悠に内心薄く微笑みながら背を向けた。
この合コンに修司も来ること、そして伊藤薫が今の修司の彼女だということは、槙はあえて伝えなかった。
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