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”今夜の生贄”
そう告げられたボクは、2人の不良に連れられ、暗い路地を歩いていた。
「最近修司さんおっかねぇからなぁ、ストレス解消にはなるだろうよ。」
「ボコっている修司さん、かっけえしな、見もの、見もの」
けらけら笑う2人の会話を耳にして、思わず目を開く。
ボコるって・・・
ボクまさか殴られちゃうの?
生贄ってまさかサンドバックになることじゃ・・・
恐怖に震えあがり、あわてて抵抗を試みるが、2人に敵うわけもなかった。
「ここだぜ、お前の墓場」
2人の不良が足を止めたのは、いかにも怪しいバーの前。
何の躊躇もなく扉は開けられ、煙草やお酒の匂いが充満する店内に押し込まれる。
人の多さも加わって、店内はとても暑く、しかも煙って非常に居心地が悪い。
早く帰りたい・・・
そんな願いも虚しくさらに奥へと連れて行かれた。
「修司さん、こんばんわって槙さんじゃないすか。」
不良の一人が声をかけて振り返ったのは、眼鏡をかけ知的そうでスラリと背が高い男だった。
「あぁ、夏目くん。それに近藤くんも。修司なら奥の部屋で暴れてるよ。」
薄く微笑むその姿は、黒い翼が生えた天使のような美しさだった。
「っえ、じゃあもう生贄捕まえてたんすか!?」
「うん、運悪く道で修司とぶつかっちゃった子でね、おぼっちゃま学校の男の子だよ。」
まだ中学生らしいよ、と告げるその口調には全く罪悪感がない。
平気でそういうことができる彼らに怒りがこみあげそうになった。
「・・で、その子は誰?」
鋭い視線を向けられ、思わずうつむいてしまった。
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