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早速買い出しを命令され逆らうことも出来ずに、トボトボと道を歩いていた。
本当は逃げたい。
今なんか絶好のチャンスだ。‥でも
"逃げるなんて馬鹿な行為をしたらどうなるか、分かっているよね?"
冷酷な笑みを浮かべた槙に言われたこの一言は、恐怖というものを胸に刻み込まれた。
あの人はとても不良には見えないけれど、だからこそいざという時何されるか分からないし、怖くて仕方がない。
言われた通りに買い出しをすれば、両手は大きな荷物でふさがれ、ふらつきながら店へと戻った。
「た、ただいま帰りました。」
小さく呟いた筈なのに何人かの不良が此方をチラ見する。
思わず俯いてしまっていると、上の方から声が聞こえた。
「お疲れさま。言うこと、ちゃんと聞いてくれたんだね。偉い、偉い」
褒められてる気がしないのは、その冷たい口調だからだろうか。
店の奥まで運ぶように言われたので、素直に従う。
槙が奥で立ち止まり部屋のドアを開けると、血の生々しい臭いが鼻を突いた。
「修司、相変わらずの暴れようだね。相手は中学生なんだから手加減してあげなくちゃ」
そう言うやいなや、槙は気絶し転がった中学生の頬を軽く叩き、起こさせる。
中学生の男の子は恐怖で震えたまま、大きなケガをしているにも関わらず逃げるように走り去っていった。
「…で、まだ修司はご機嫌斜めなワケ?」
「うるせぇよ。」
血だらけだった男の子に目を奪われていたボクは、この時初めて修司と呼ばれる男をみた。
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