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髪の色は不良にしては落ち着いた黒だが、耳にはピアス、両手首にはジャラジャラとお洒落なリングを付け、学ランは着崩されている、モデルのような体格の男に思わず目を奪われた。
「…なんだよこいつ」
ボクの視線に気付いた修司が、鋭い目で睨みつける。
まるで他人を近付けないような、そんな目。
「ん?ああ、今日から僕らの奴隷の子だよ。修司と一緒の学校らしいけど、名前は?」
2人からの鋭い視線に恐怖で震え上がったが、なんとか落ち着いて言葉を繋げる。
「…あ、えと、佐藤悠です。」
ああ、もうやだ。
誰か助けて。
泣きそうなのをこらえていると、
「…殴らせろ」
低く恐ろしい声が部屋に響いた。
「修司、まだ殴り足りないの?」
思いも寄らない一言に槙は思わず眉を潜める。
別にこの奴隷が殴られようと構わないが、最近機嫌が悪い修司はずっとこの調子で正直不安だと、槙は感じ始めていた。
「別にかまわねぇだろ、奴隷なんだから。」
言いながら此方に近付いてくる修司に、ボクは背をドアに預けたまま動けなくなっていた。
脳裏によぎったのは先程の血だらけの男の子。
まさかボクもあんなに…恐怖でがちがちになった体は動くことも出来なかった。
「……こういう奴が一番大嫌いなんだよな。」
強い衝撃に体は吹き飛んだ。痛いなんてもんじゃない。目から涙がこぼれ落ちる。
「…ちっ」
舌打ちとともに修司はこの部屋から出て行った。
動かない体を必死に起こしていると、槙の大きなため息が聞こえた。
「手加減もしないなんて修司らしいけど…大丈夫?」
殴られたのは頬。
骨まではいってないが、腫れているみたいでズキズキしている。
「…まあ修司がこれくらいで済ませたのは何かの運だね。」
それだけ言うと槙もボクが買い出しに行った荷物を手に、部屋から出て行った。
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