終わってから気付く物。

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【朝の邂逅】 <01>  朝、なんだか目が冴えてしまったので早く家を出た。いつもの停留所。昨日よりも澄んだ寒空を眺めながらバスを待つことだいたい十分。  停留所にサイがやってきた。 「…………」  サイは足を折り、姿勢を低くする。乗れって事だろうか。とりあえず角に跨ぐように座った。 「お客さん、前が見えないし鼻が痛いです。背中に乗って下さい」  サイが喋った。サイって喋るのか。喋って良いのか。 「お客さん?」 「あ、すいません」  一度降りてから、背中に乗り直す。サイは立ち上がると、最初はゆっくり、次第に速く走り始めた。 「……案外、速いんですね」 「まぁ、ちょっと本気出せばこんなもんですよ」  たはは、と笑うサイ。 「それにしてもお客さん、朝早いんですね。いつもこの時間は誰も居ないんですよ」 「あぁ、明日は文化祭なんで」 「ほぅ、それは楽しそうだ」  たはは、とまたサイは可笑しそうに笑った。 <02>  走り始めて五分、不思議なことに気付いた。いつの間にかサイは僕の知らない道を走っていた。 「要は、タイミングなんです」  サイは言う。 「この無限に続くような有限の時間の中、お客さんと私が出会ったように、一つ一つのタイミングは奇跡なんです。  そう考えると、今生きていること、今、何か出来ることがあること。それも奇跡と呼ぶことが出来ます」  遠くに、僕の家が見えてきた。 「さぁ、まずは何時もより早く起きてみましょう。そして新たなタイミングを掴みに出掛けましょう。それが出来るのも、一つの奇跡なのですから」 <03>  という所で目が覚めた。 「…………」  何時もより早く起きてしまった。あと三十分、寝ていられる。  ……いや、早く起きよう。  そういうわけで早く家を出た。いつもの停留所。昨日よりも澄んだ寒空を眺めながらバスを待つことだいたい十分。  停留所にバスが来た。  何となく運転席の近くに座る。 「お客さん、朝早いんですね。いつもこの時間は誰も居ないんですよ」 「あぁ、明日は文化祭なんで」 「ほぅ、それは楽しそうだ」  たはは、と運転手は可笑しそうに笑った。  
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