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男は猫が嫌いだ。
言うことは聞かず、気まぐれで、それが昔付き合っていた恋人のようでムカついてムカついて仕方ない。
だから、猫を殺し始めた。
男は暇潰しに公園に出ていた。そこは全く変化の無い、かなり穏やかな風景。
誰も知らない。今、自分たちの目の前に猫の殺人鬼がここにいようなどと。
「おじさん、猫が好きなの?」
突然見知らぬ少女がやって来て、唐突にそう聞かれた。
「……何でそう思うんだい、お嬢ちゃん」
「だって、ずっと猫を眺めているから」
少女が指を差した方には、確かに白と黒の斑猫が日向ぼっこして眠っていたが、正直男はその猫の存在に気づかなかった。
ずっと前を向いて一点集中で見ていたため、そういう誤解が生じたのかもしれない。
「残念だけどお嬢ちゃん、俺は猫が嫌いなんだ」
「そうなの?」
少女の表情は、驚きにも、悲しそうにも見えず、どうしてなの?という純粋な疑問の表情。
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